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ウツボカズラの燭台

​美しく、そして怪しいウツボカズラ。
​一人静かな夜にそっと寄り添って、柔らかな火を灯してくれますように。

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ウツボカズラ、それ自体。

代表的な食虫植物として有名なウツボカズラ。そのウツボカズラとの初めての出会いは、学生時代に鳥類の観察を目的に訪れたボルネオ島(マレーシア)、サラワク州でのことでした。

色彩豊かな鳥たちの営み、見たこともない昆虫たちのざわめき、TVでしか見たことのない霊長類たちの樹上でのまどろみに夢中になっていた私を同じように魅了したのが、高原から密林まで様々な環境に対応し奇怪な形態をしたウツボカズラたちでした。

くるりと巻かれた蔓で木から垂れ下がるものから、薄暗い林床で落ち葉に埋もれそうな地上性もの、中でカエルが卵を産みオタマジャクシたちの揺り籠となっているものまでその姿や生態は多岐にわたり、その多様性と形態の美しさに圧倒されたのを今でも鮮明に覚えています。

帰国してからも、現地で購入したウツボカズラの図鑑をことあるごとに開いて眺めたり、ウツボカズラに関する文献を見かけてはその内容を読み込んでニマニマする日々を送ってきました。

モチーフとしてのウツボカズラ。

私が作品のアイディアを練る過程は様々ですが、今回の場合は9月に参画した阪急梅田本店での『パラレルナイトマーケット』のテーマとして「夜」というキーワードがあり、そこから燭台の制作をしようと決めました。
ここに合わせた新作を何か…コロナ禍の中で一人静かに過ごす夜を思い浮かべた時に、暗がりでほわっと火を灯す蝋燭のイメージが自然と下りてきました。
その怪しい煌きと、ボルネオの密林の暗がりで見たウツボカズラの奇妙な形態とが頭の中で見事に合致して、構想を固めるのにそう時間は要しませんでした。

また、最初にあげた写真のウツボカズラにもある通り、補虫袋の基部がぐぐっと後部に捻り上がる独特の形態が、手持ちの燭台の「持ち手」として素敵に機能する様がすとんと頭に落ちてきた瞬間も気持ちが良かったです。

今回モチーフとして選んだのは、ボルネオに生えるウツボカズラの一種、Nepenthes hemsleyana 。数年前に何かで読んで、その独特な生態が強く印象に残っていた種です。

栄養源としての幾多の節足動物や先に挙げたような両生類等、様々な生き物と密接な関係を持つウツボカズラですが、このNepenthes hemsleyanaは特に珍しく哺乳類であるコウモリとの共生関係を有しています。

彼らは、コウモリに安全な寝床を供給する代わりにコウモリが補虫袋に落とす糞から栄養を貰っているのです。その奇妙な関係の秘訣は彼らの蓋〜捕虫袋間の曲線にあり、ここが独特な反響を生み密林の中でもコウモリに魅力的な寝床としての補虫袋の場所を認識してもらうことができると。その記事を読んだ時は、その複雑な生態に心底ワクワクしたものです。

私の燭台にもコウモリ来ないかな。いつかこの燭台に合わせたコウモリ作品を作ろうと心に決めています。

作品としてのウツボカズラ。

​さてさて、恐ろしく前置きが長くなりました…。

​そんなこんなで完成した作品。Nepenthes hemsleyanaの佇まいは崩さないようにしつつ、燭台として蝋燭とのバランスが整うように全体のフォルムをデフォルメしています。
他の作品ではほとんどデフォルメしないので、ウツボカズラに詳しい方から説明なしの写真だけで同定してもらえた時は思わずほくそ笑んでしまいました。

そしてHODAKAHORAの拘りとして、形態と機能がリンクした何かを付属させたい。その思いから、ウツボカズラを語るには外せない葉っぱの「蓋」をマグネット着脱式にしてお仏壇で使うような「蝋燭消し」の役割を担わせました。蝋燭の高さによっては外れないと使えない、けど、ただ外れるだけじゃツマラナイ。こういうことを考えている時が一番楽しいです。マグネットだけではなく、補虫袋の縁の上部で蓋の柄の左右を挟み込むようにデザインを工夫しているので、持ち運び中もズレて落下するようなことはありません。

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細々としたこだわりは色々ありますが、もう一点上げるとしたら「持ち手」でしょうか。

私の中の燭台のイメージは持ち運び式が絶対でしたし、真鍮製である程度重量のあるものなので持ち心地の良さはどうしても譲れませんでした。そのために参考にしたのはティーカップの持ち手です。何気なく持ち上げた時に自然と中指がフィットして重量を支えられるように蔓のカーブをデザインしています。実際に見ていただける機会がございましたら、ぜひお手に取ってその持ち心地を確かめて頂けたら嬉しいです。

最後になりましたが、こちらが火を灯した時の様子です。

ウツボカズラの妖艶なイメージとマッチするように、和蝋燭(糠蝋燭)を合わせてみました。

私からお迎えいただけた方には付属品として、こちらの蝋燭をお付けする予定です。

怪しい雰囲気を漂わせたウツボカズラと、柔らかな和蝋燭の煌き、構想を練っていた時の自分の妄想とぴったり合致するものが仕上げられてとても満足です。

最後に載せた動画も合わせてお楽しみくださいませ。

2021.12.03 HODAKAHORA

​作品基本情報

本体:真鍮
台座:黒檀
付属品:糠蝋燭

高さ:約13.5cm

台座:約6×6cm

​価格:¥72,000