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ナナフシモドキのネックレス

風に揺られて、枝も葉っぱも

彼らも揺れる。

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HODAKAHORAにとってのこの作品

この作品の制作は、私の中でターニングポイントの一つに位置付けています。

制作したのは2019年5月。HODAKAHORA立ち上げの半年後です。ぼんやり道筋が見え始めたのは初参加の昆虫大学で発表したミカヅキツノゼミ(2018年10月)ですが、はっきりと自分の掘り進めたい土壌がわかったのはこの作品からのような気がします。生態・形態・機能をキーに制作に臨んでおりますが、その先駆けとなったものです。

  

作品について話す前にまず、ナナフシモドキについて。

「なんで普通のナナフシにしなかったんですか?」

これはよく聞かれます。なぜ一般的なナナフシではなくモドキを選んだのかと。所説ありますが、「七節」が「節くれだった枝」のことを表す言葉で、「枝によく似た虫」ということで「七節モドキ」→「ナナフシモドキ」となったと言われています。

つまり「ナナフシ」という種類の虫はおらず「ナナフシモドキ」が省略されて呼ばれている。所謂「ナナフシ」は「ナナフシモドキ」のことを指しているのです。

計画と組み立て

季節は春、初夏に向けて服を選んでいた時にふっと「シンプルなネックレスが作りたい」と思いました。私は普段そこまでアクセサリーを身に付けないのですが、時々無性にこの服だったらこんなアクセサリーを合わせたいという欲が沸きます。それに、まだブランド立ち上げ直後でラインナップも少なくネックレスは一度も作ったことがありませんでした。

 

「シンプルなネックレス」として私がイメージするのは造形の構成要素ができるだけ少ないもの。丸なら丸と、四角なら四角と、線なら線とだけ組み合わせたかった。

細いチェーンに細いもの、と考えた時に真っ先に頭に浮かんだのはナナフシモドキでした。この細さ、どうせなら実物大で作りたい。それが一番この生き物の佇まいが伝わると思いました。

当時モチーフを決めてまずラフ画(とも言えないほど雑)を描いてみましたが、このまま作ったところで実用に耐えられないのは分かりきっていました。脚や関節部が細すぎて力が加わったら曲がってしまうからです。かといって壊さないように気を遣ってネックレスとしての機能を十分に果たせないものを作るのも嫌だ。スケッチブックにたらたらと案を描いていると、ふと直線的な脚がただの金属棒に見えてきました。

「脚と考えるから悩むけど、胴体とチェーンを繋ぐ“パーツ”だと思えばいいんだ」と思い至った瞬間です。

モチーフとして実物大の脚を見ると細くて頼りないですが、ただの接続パーツとして見るとなんの不安もない太さと接続点(胴体⇆チェーン)の数がありました。これはイケると振り切ってからは早かったです。

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ナナフシモドキそのものに話を戻しますと、彼らは比較的身近な生き物。擬態の名人なので意識しないと目につかないかもしれませんが、少し緑豊かな公園まで脚を伸ばすと季節さえ合えばそこかしこで見つかります。遊歩道の手すりで歩いていたりして擬態とは…となることもしばしば。そんな彼ら、見た目だけでも十分枝に擬態できているのに、それにとどまらず風に揺れる枝を模して彼ら自身もゆらゆらと体を動かす行動をとるのです。

このゆらゆらと体を動かす様と、ネックレスとしての物理的制約の妥協点とが重なった時は本当に嬉しくなりました。

あえて可動式にすることで力を逃がし壊れにくいという点は今後の制作にもつなげることができそうです。

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​こだわりと感想

こうして完成した全体像がこちら。

写真からは伝わらないかもしれませんが、表裏上下全て立体でシルエットではなく3次元造形になっています。重力を感じる姿勢と、意外とぽってりとした腹部がお気に入り。

それに対して脚はなんちゃって三次元の二次元です。

ネックレスとしての使用感とナナフシモドキの佇まいの両立を図った時にここに落ち着いたのですが、これが可能だったのはナナフシモドキの胴体が棒状だったからに他なりません。ありがとう、スティックインセクト(ナナフシの英名)。

 

また、先に書いたことと矛盾しますが、アクセントとして丸チェーンを合わせました。思った以上にナナフシモドキがナナフシモドキらしくなったので、対角にひとクセ入れたくなりました。

​エンドパーツは天然石のエピドート。グレーがかった緑色がSilver製のナナフシモドキと雰囲気が合います。

こだわった点を上げるとすると胴体⇆脚、脚⇆チェーンの接続部です。これは他の作品にも言えることですが、個人的にパーツとパーツを丸カンで繋ぐと途端に「金具」感が出てしまうので出来る限り無くすようにしています。

このナナフシモドキに関しても、胴体にトンネル状の彫りを入れそこに脚パーツを組み込む構造にしました。

これによって可動式でありながらも接続部がなめらかで自然な造りに収めることができました。また、この組み方だと脚の動く方向が胴体に対して平行方向に限定されるので脚同士の絡まりも防止できます。

「らしさ」とは

生き物モチーフのものを制作していると、全てを余すことなく彫り込むことはできないし、またそれが正解とも言えません。そこで制作を進める上で引き算をしていくことになりますが、どこを残すべきか、その生き物をそれたらしめる「らしさ」とは何かという壁に向き合うことになります(造形に関しての話です)。

私が個人的に思うナナフシ目に属するものたちの「らしさ」は「顔つき」。

真横に位置した複眼、前方に揃って突き出すような触角、慎ましい口元…作品ラインナップにある「オオコノハムシの靴べら」でもこの点は意識しました。「お前さんもナナフシ目だもんな!」って。

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このようにして本物と同じようにゆらゆらと揺れるネックレスが完成したわけですが、発表時は「これが私の考えるシンプルなネックレス!」という初心から一歩も動いていないよくわからない方向でテンションが上がっていました。しかし反響はほとんど脚の可動と生態とのリンクについて。そりゃそうですよね。皆様の客観的な視点にはいつも助けられています。

 

以下は発表時に友人が寄せてくれた感想です。

〜ナナフシモドキの愛しい生態と、それをネックレスにした時の造形的な美しさを、強度と構造の両面から落とし込んでいく接続点が美しい。〜

語彙力の乏しい自分が制作時にやりたかったこと・やってきたことをここまで汲み取ってもらえるなんて…と嬉しくなりました。

これ以降、新しい作品を考えている時はいつもこの一文を思い出して制作に向き合っています。美しい接続点探し、難しいけど楽しい作業です。

2021.12.05 HODAKAHORA

​作品基本情報

本体その他パーツ:Silver925

エンドパーツ:エピドート

チェーン長:約65cm
アジャスター:約5.0cm
ナナフシ全長:約9.0cm

​価格:¥24,000